日本図学会第1回デジタルモデリングコンテスト
日本図学会第1回デジタルモデリングコンテスト実施結果報告
第1回デジタルモデリングコンテスト実行委員会
委員長 町田 芳明
委員長 町田 芳明
2007年5月12日(土),13日(日)の両日,「日本図学会2007年度・創立40周年記念大会」の開催に合わせ日本図学会第1回デジタルモデリングコンテストを実施いたしましたので報告します.
コンテスト開催の企画について理事会において討議し以下のように取り決めました.
・開催の目的
日本図学会は,コンピュータを用いたデジタルモデリング技術を普及させるために,立体的な機構や立体的な造形物の創造をラピッドプロトタイピングを用いて支援するコンテストを開催する.・目的と内容
メカニズムの立体的な構造の考案や立体的な発想による立体形状の製作を支援し,作品発表の場を提供すること,コンピュータを用いたデジタルモデリング技術を普及することを目的とする.複雑な動きを持つ対象,建築,工業デザイン,デジタルアート作品までを含めた幅広いジャンルの3次元モデルを募集の対象とする.また審査の基準をつぎのように取り決めました.
・審査基準
これまでの技術では製作することが困難だった複雑な機構や幾何学的図形を実体化するなど,積層造形装置を利用することによって実現が可能になった立体構造の新規性を評価する.・作品と知的所有権
図学会として何よりも注意しなければならないのは,応募作品が他人の知的所有権を侵害していた場合(盗作,模倣など)です.作品を調査して完全に防止することは不可能ですし,製作者自身にその自覚が無い場合もあります.そこで,知的所有権と応募作品の全責任は応募者(製作者)に帰属することとしました.・作品の募集
2007年1月1日から3月20日までの期間に募集を行い,13作品のご応募をいただきました.募集期間が短かったことや年度末の多忙期に重なったため,応募作品の数は多くはありませんでしたが,期待どおり斬新なアイディアの作品が集まりました.
その後,実行委員会7名により厳正なる審査を行い,つぎのように入選・入賞作品が決定いたしました.
最優秀賞 | 立体地図コロコロスタンプ | 東京カートグラフィック株式会社(近藤 賀誉 ) |
優秀賞 | 直列4気筒エンジン教育用モデル | 高島 一郎 (株式会社 高島設計) |
デコボコ地球儀-01 | 東京カートグラフィック株式会社 (近藤 賀誉) | |
猛犬注意 | 小柳 久佐 (個人) | |
ピヨピヨエッグ | 小柳 久佐 (個人) | |
入選 | Wild Kitty | 重石 彩子 (株式会社 白組) |
男性用オーデコロンディスペンサー Gauntlet | 鈴木 靖生(多摩美術大学造形表現学部デザイン学科(3年学生)) | |
サウンドダック | 三浦 公裕 (株式会社 白組) |
最優秀賞は,東京カートグラフィック株式会社(近藤賀誉氏)の「立体地図コロコロスタンプ」が受賞しました. 平面の地図に高さを加え立体地図とした製品はよく見かけますが,これはローラに高さを反転させた立体地図が刻印してあり,粘土板などの上に転がすと,メルカトル図法による立体地図が再現されるという作品です. 機械的な複雑な機構はありませんが,積層造形装置の利点をうまく生かしていることが,高く評価されました. |
優秀賞の「直列4気筒エンジン教育用モデル」 高島一郎氏(株式会社 高島設計)は,本コンテストが期待をしていたとおり,立体的な機構や造形物をラピッドプロトタイピングで再現した作品です.レシプロエンジンの機構が精密に再現されており,レバーを回せばピストンなどの複雑な機構が動きます.タイトルに「教育用モデル」とあるとおり,メカニズムの教材として模範的な作品です.高島一郎氏にはこのほかに「ロータリーエンジン」の模型も参考展示していただきました. |
優秀賞の「デコボコ地球儀-01」 東京カートグラフィック株式会社(近藤賀誉氏)は最優秀賞につづき2作品目の受賞です.地球を立体で表現すれば,山の高さなどは地球全体の大きさに比べてスケールが小さいため,ほとんど立体では表現できません.そこで,この作品は地球表面の高さの要素を何万倍にも誇張して地球儀を製作しました.地球の形状を表現する手法として斬新なアイディアです. |
また,優秀賞として小柳久佐氏の2点の作品「ピヨピヨエッグ」と「猛犬注意」が選ばれました.
「ピヨピヨエッグ」は,積層造形装置を持ってしても製作が難しいと技術者を悩ませた作品です.努力の甲斐あって,立体的な曲線が交差した美しい作品が完成しました. また,「猛犬注意」は子供のおもちゃを思わせる,シンプルで楽しい作品です.クランクを回せば,犬の口としっぽが連動して動くようになっています. |
最優秀賞と優秀賞の表彰は,5月12日「40周年記念祝賀会・懇親会」の中で執り行われました.
このほかにも素晴らしい作品の応募をいただきましたが,データや構造に不備があるため,残念ながら積層造形で製作できない作品もありました.
審査結果をみれば,立体的な発想で,さらに立体的な動きや変化を伴っている作品が高い評価を受けています.
このたびのコンテストは告示から応募締め切りまでの期間が短かったことと,また年度末の忙しい時期に重なったにもかかわらず,企画にご協力くださった会員の皆様,および作品をご披露くださいました皆様に心よりお礼申し上げます.
デジタルモデリングコンテストは本年の第1回にひき続き,ぜひ来年も実施したいと思っております.次回は今回の反省点を踏まえて万全の準備で取り掛かる所存でございます.次回もさらに素晴らしい作品をご応募くださいますことを期待しお待ちいたしております.
まちだ よしあき
埼玉県産業技術総合センター
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