日本図学会 > 日本図学会論文賞 > 平坦折り紙の展開図から再現される形態数の数え上げ手法

第4回日本図学会論文賞選考結果報告
日本図学会論文賞選考委員会

 選考委員会は,2007年から2008年に発行された図学研究(通 巻115号〜122号)に掲載された研究論文から教育分野以外の研 究論文8件を対象として候補論文リストを作成し,編集委員会 委員18名に配布し,最大3件までの研究論文の推薦をお願いし た.推薦は選定委員会宛てにメール投票していただいた.その 結果,研究論文として7件の論文が推薦された.選定委員会で は,第1候補3点,第2候補2点,第3候補1点で加点した集 計結果を基に慎重に審議し,研究論文賞1件を候補者に決定 し,理事会に報告し承認された.
 
第4回日本図学会論文賞(研究論文賞)
受賞者:正会員 三谷純(筑波大学)
受賞論文:「平坦折り折紙の展開図から再現される形態数の数 え上げ手法」
     (図学研究第41巻1号(通巻115号))
論文概要:
 対象を平坦に折りたたまれる折紙に限定することで,山折, 谷折および輪郭線から構成される展開図から,その折紙が折り たたまれた状態の外形を決定できる.しかし,折紙の構成面素 (折り線に囲まれた多角形)がどのような重なり順になるかを 推定することは,構成面素同士の干渉を考慮しなければならな いため難しい問題である.本稿では,計算機内に構成面素を重 なり順に格納するスタックを用意し,実現可能な重なり順を総 当たりで調べ上げる手法を提案する.さらに,実現可能な面の 重なり順から,折紙作品として見たときに,同一な解を除き, 異なる作品となる場合の数だけを数え上げる手法を提案する.
推薦者の意見から:
 展開図の面の重なり順を決めるために提案したオリジナルな 手法によって,膨大な重なり方の候補から短時間で実際の解に までたどりつけている.複雑な展開図に関する今後の展望も述 べられており,さらなる発展が期待される.
 本論文は,折紙の展開図を考えるための基本的な研究であ り,問題がよく整理され,解決に向かう手法が明快である点を 評価します.図学会としてふさわしく意味のある研究であると 思われます.