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2006年度日本図学会賞選考結果報告
日本図学会賞選考委員会

受賞者:正会員 三谷 純 氏
業績:「ペーパークラフトと折り紙の幾何学に関する研究」
業績概要:
 三谷純氏は,形状モデリングに関する研究をはじめとして,ペーパークラフトや折り紙の幾何学に関連した数多くの研究成果を日本図学会,情報処理学会,Int. J. Shape Modeling及びSIGGRAPH,Eurographics Workshopをはじめとする多数の国際会議で原著論文,学会講演として発表している.その中で,コンピュータによるさまざまな幾何処理とユーザの意図を容易に反映できるインタラクションを考究し,それらの成果が図学会にとって極めて重要であることを提示してきた.
 氏はコンピュータ内部の3次元形状からペーパークラフト用の展開図を生成する手法や折り紙建築モデルの設計支援,展開図に着目した折り紙の形状に関する研究などを行ってきた.
  1. 3次元形状の展開に関しては従来よりさまざまな手法が提案されているが,自由曲面を近似的に展開するなど計算幾何学を用いて極めて有用な3次元形状の展開手法を考案したほか,展開図からの紙模型工作に要するコスト(時間)の算出を試みるなど,組み立てやすさまで考慮した非常に独創的な視点で研究を行っている.
  2. 折り紙建築モデルに関する研究では,その展開図と立ち上がり形状の幾何的関係を活かし,ユーザが直接3次元形状を操作できる対話的設計手法を提案している.
  3. 折り紙に関する研究では,展開図と折りたたみ後の形状をコンピュータ内にモデル化するための効率的な手法を提案し,今後の折り紙の研究基盤となる技術の構築を進めている.
 これら一連の研究は,従来の図法幾何学で取り扱ってきた3次元形状の平面展開という課題に,新たな学問分野を示したものである.特に,手による作図手法を大きく発展させ,計算機科学を活用した新たな図形科学の一分野を切り開いたと考えられる.また,氏の研究成果は,ユーザインタフェースにも優れた面を持っている.氏が開発したシステムを利用した教育事例も報告されている.また,開発システムは市販ソフトウエアとして発展しており,多くのユーザが利用している.このことは,氏が開発したシステムが図形科学教育へも活用できることを示している.
 以上,図学,および,図学教育の発展についての寄与は多大で,その業績は本学会賞受賞に相当するものと認められる.