日本図学会 図学研究査読結果報告
■ 原稿タイトル
完全同投影体の導出 ■ 査読結果(以下の1つを選択し、それ以外を削除)
・修正後査読
■ 判定基準(それぞれ1~5の値で評価) ・独創性 3 ・学術的有用性 2 ・信頼性 5 ・発展性 4 ・完成度 2 ■ 表現方法 以下の表現方法について適切ですか? ([はい]・[いいえ]の一方を残し、[いいえ]の場合はその理由を記す) ・表題 [いいえ]
本稿は、後述の「査読結果に関するコメント」に示すように、ある限られた条件下での立体の形態上の特徴が成立する場合の数を求めたもので、それに相応しい表題に変更する必要がある。
・ページ数 [はい] ・文章 [はい] ・用語 [いいえ]
本稿であつかわれている用語としての「完全同投影体」は、後述の「査読結果に関するコメント」に示すように、ある限られた条件下で複数の立体の投影図がたまたま同じになるということを示すのに相応しくなく、もう少し正確に前提条件を加えた用語に変更する必要がある。
・図・表 [はい] ・引用・著作権 [はい] ■ 査読結果が「不採録」の場合の理由 ■ 査読結果が「条件付き採録」の場合の採録の条件 ■ 査読結果に関するコメント (頁と行を示しながら、具体的に記述する)
本稿は、ある種の形態的特徴を有する立体の構成法について論じている点で、内容として本図学会に関連が深く、また克明に結果を得るまでの過程が提示されていて、信頼性も十分あると考えられるものの、著者の方で図学における立体に対する投影面の設定の仕方について誤解があり、それが「完全同投影体という物体が存在することの発見としての意義があると考えており」という記述につながっていると考えられるため、「修正後査読」と判定する。本稿で修正されるべき箇所を、以下に示す。
1) 2ページ左欄上から12行目に「このような物体が存在することの発見として意義深い」とあるが、このような物体の存在は、既に良く知られており、発見と述べるに当たらない。それは、受験生が高校の数Ⅲの積分で出会う「半径が同じ3つの円柱が1ヶ所で互いに直交する場合の共通部分の体積を求める問題」に現れる立体で、3つの円柱の中心線が各々X, Y, Zの3軸に平行であるとすると、仮にXY平面に平行な画面、YZ平面に平行な画面、ZX平面に平行な画面をそれぞれ設定すれば、それら各々の画面上に得られる平面図、正面図、側面図はいずれも円となり、円柱と同半径の球の3面図と同じである。もちろん後述の3)に示す理由により、この立体と球が完全同投影体であるとは言わない。
2) 3ページ右欄下から2行目に「図4-4に示す頂点をBDGEとする四面体となる」とあるが、図4-4には頂点をBDGEとする四面体は描かれていない。
3) 4ページ左欄上から7行目に「この物体の6面図は図4-6と全く同じである」とあるが、正投影法の誤解に基づく記述である。一般によく参照されるWikipediaの「正投影図」の項でも「品物の特徴をよく表している面・加工上重要性の高い面を主投影図として選び、主投影図で表せない部分を他の図形で補足する」との記述があるように、正投影図で平面図や正面図を表現する場合、その立体の特徴をよく表すように当該立体を3象限に置くわけで、例えば図4-8にM1(1)とM1(2)として描かれている立体であれば、いずれも立体の右側面として表現されている3角形を下底としておくと平面図が各々異なり、2立体の違いが投影図としてはっきり表現できる。すなわち主投影面は、正投影法ではX,Y,Z3軸のいずれかに平行ないし垂直に決めなければならないのではなく、そもそも座標系とは関係なく表現すべき立体の形状に応じて、その形状を誤りなく他者に伝えるべく適宜決めるべきものであり、本来理論的に一義的に決め得るものではない。
4) 4ページ左欄下から8行目に「この二つの物体が完全同投影体(DFO/SSV)である」とあるが、投影という用語が図学でいう投影画面の設定の仕方を前提としている限り、二つの物体は上記3)で述べた理由により、本稿の2ページに定義されている意味での完全同投影体ではない。
5) 9ページ左欄下から1行目に「この検討結果は完全同投影体という物体が存在することの発見としての意義があると考えており」とあるが、上記のように図学的に発見と言うには当たらない。
■ 論文をよりよくするためのコメント
本稿は、図学の基本である投影という用語を採用して、議論の対象とする立体の形態上の特徴を「完全同投影体」という用語で表現するために上記のような問題が生ずるものの、扱われている立体の形態自体は大層興味深く、2ページ左欄上から17行目に「その物体の面白さや表示方式を工夫して芸術面へ展開すること・・・・・・・・ホームページ、会社のロゴ、展示会場のシンボルオブジェクト等の創作へのヒントとして役立てる等その用途に限りはない」とあるが、この記述には大賛成である。本稿で論じられた立体群の形態上の特徴を、投影といった図学の根幹をなす用語を避けて正確に定義され、その形態構成への応用の見通し等と共にまとめられることで、図学の良い論文になるものと期待する。
■ 編集委員会への連絡事項(著者には伝わりません)