日本図学会 > 日本図学会論文賞 > 大学入学時における学生の空間認識力の経年変化--学習指導要領改訂による影響--

第5回日本図学会論文賞選考結果報告
日本図学会論文賞選考委員会

 選考委員会は,2008年から2009年に発行された図学研究(通 巻119号〜126号)に掲載された論文や教育研究会報告から教育 分野の論文11編を対象として候補論文リストを作成し,すべて の編集委員,図学教育研究会委員に配布し,最大3件までの教 育論文の推薦をお願いした.推薦は選定委員会宛にメール投票 していただいた.
 その結果,教育論文として5作の論文が推薦された.選定委 員会では第一候補3点,第2候補2点,第3候補1点で加点し た集計結果を基に慎重に審議し,教育論文賞1件を候補者に決 定し,理事会に報告し承認された.
 
第5回日本図学会論文賞(教育論文賞)
受賞者:正会員 菅井祐之(日本大学)
    正会員 鈴木腎次郎(大学評価・学位授与機構)
受賞論文:「大学入学時における学生の空間認識力の経年変化 --学習指導要領改訂による影響--」
     (図学研究 第43巻2号(通巻124号))
論文概要:
 現行学習指導要領の実施に伴う図学関連教育の学習定着度の 変化を調べるために東京大学においてアンケート調査を行っ た.また,空間認識力の変化を調べるために,東京大学,日本 大学においてMCT調査を行い,日本大学の調査結果について は明星大学の従来の調査結果と比較した.その結果,以下の事 が明らかになった.高校迄の図学関連項目に関する学習定着度 は,現行指導要領の実施に伴って低下した.現行指導要領実施 前後におけるMCT調査において,東京大学では得点に変化は みられなかったが日本大学においては有意に下落した.現行指 導要領の実施に伴い学生の空間認識力が低下した可能性が考え られる.現行指導要領実施以前のMCT得点の経年変化をみる と,両大学ともに低下していたが,その下落幅は大学進学率の 上書による偏差値変化によって説明できる.このことから,こ の間の指導要領改訂は空間認識力に大きな影響を及ぼしていな いものと考えられる.